「お風呂も、食事も、命懸けの話」
高齢者にとってお風呂が体力を使うことは、知られてきました。
在宅ではお風呂場での急変に備えた緊急ボタンも普及してきたし、若い世代もヒートショックがリスクであることは知っているはずです。
でも高齢者にとっては、食事も入浴と同じくらい、場合によってはそれ以上に、身体への負荷がかかっているということは、あまり知られていません。
お風呂が命懸けな理由
入浴は、温度変化だけで血圧が激しく上下します。湯船に入る動作、立ち上がる動作、身体を支える動作。健康な人には「さっぱりした」で終わる30分が、高齢者には全身運動です。
だから状態が悪くなると、介護施設でも在宅介護でも真っ先にお風呂は中止になります。入浴可否の判断には体温はもちろん血圧や脈拍、呼吸などのバイタルサイン、糖尿の方は血糖値にも細心の注意が必要です。
食事も、同じくらい命懸けです
一口食べて、噛んで、飲み込む。この動作だけで、顔まわりから首、肩、背中の筋肉を総動員します。
飲み込む瞬間、人は息を止めます。肺の機能が落ちている方にとって、これが食事のたびに繰り返される。血中の酸素飽和度が下がることすらあります。
食べ物が胃に入れば、今度は消化のために血液が胃腸へ集中します。心臓が弱い方には、それだけで大きな負担です。食後にぐったりして動けなくなるのは、わがままでも怠けでもありません。全力疾走した後の身体が休もうとしているのと、同じことです。
そして、若くて健康な方には想像しづらいですが、高齢者にとって「座位(座った姿勢)」を保つことは、私たちが想像する以上に体幹の筋力を消耗します。
重力に抗って30分座り続けることは、それだけで相当な体力を使い、「食べる」という動作にたどり着く前に、すでに疲れ切っている方もいます。
だから「残さず食べてね」という励ましは、時に残酷になることがあります。へとへとの人に「あと5キロ走って」と言うのと、同じになってしまうことがあるのです。
では、どうするか
消費するエネルギーを減らしてさしあげること。それが介護の第一歩です。テーブルの高さ、椅子の座り心地、足の裏がしっかり床についているか。
早くから席で待機することのないよう食事の配膳に合わせて食堂へ誘導する。そういった「環境」を整えるだけで、食事にかかる負担は変わります。
食事形態が適切であるかどうか、嚥下(飲み込み)状態が正常かの評価も大変重要です。
そしてその「環境」を見れば、施設の介護力が見えてきます。
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