配置基準の裏側:パンフレットに書かれた「3対1」の真相とは?
介護保険制度が一般的になってきて、人員配置基準という言葉を耳にされたことがある方も多いと思います。身内が介護施設に入っている方は、契約時にその施設の人員配置について説明を受けていらっしゃるのではないでしょうか。
多くの介護施設では、利用者の数:介護職と看護職の合計= 3:1などと表記されています。
これをそのまま受け止めると、利用者さん3人に対して常に職員が1人そばにいてくれると言うイメージを持つ方も多いと思います。つまり60人の施設だったら、20人の職員さんが毎日働いていることになりますね。
しかし、実際はそうではありません。実はこの配置基準と言うのは「在籍している」と言う意味なんです。
例えば入所60名の施設だったら常勤の看護職と介護職が合計20名在籍していれば問題ないと言う意味です。非常勤は、その働いている時間に応じて0.5人とか0.2人といったふうにカウントされます。
つまり、配置基準と言うのは、施設の在籍人数を示すものであって、「毎日実際に何人が勤務しているか」と言うことを示す指標では全くない、ということなのです。
毎日何人勤務するかは、施設ごとに決められています。
なぜ面会時に「フロアに誰もいない」という現象が起きるのか?
「毎日20人も働いているはずの施設なのに、いつ面会に行ってもフロアに誰もいないなぁ。」と不思議に思われたご経験のある方もいるかもしれません。
面会後「エレベーターで下に降りたいんです」と言いたいだけなのに、見渡す限りどこにも職員がいなくて…、と言う声も聞いたことがあります。
どうしてそのようなことが起きるのか、実際施設ではどのタイミングで何人フロアにいるのか、これから5つの例を挙げてイメージを共有していきたいと思います。
施設形態別:実際のシフトと「体感配置」のリアル
例1 特養(従来型)
定員50名(2フロア)
要介護3〜5中心
シフト例
- 早番 7:00〜16:00 2名
- 日勤 9:00〜18:00 2名
- 遅番 11:00〜20:00 2名
- 夜勤 17:00〜翌9:30 2名
看護配置
- 日中のみ配置
- 医療処置、体調管理、受診対応などを担当
- 夜間はオンコール対応の施設も多い
実際の動き
- 9時以降、早番1名が入浴介助へ
- 午前中は受診付き添いで1名抜ける日あり
- 食事介助時はほぼ全員がフロア対応
- 夕方は記録・離床・トイレ介助集中
体感配置
- 日中:約8〜10人に対して職員1人
- 夜間:約25人に対して職員1人
特徴
従来型のため見守り範囲が広く、コールや離床対応が重なる時間帯は職員が分散しやすい。夜間は巡視中に別コールが重なることもある。
例2 特養(ユニット型)
定員54名
9名×6ユニット
シフト例
- 早番 7:00〜16:00 2名
- 日勤 9:00〜18:00 2〜3名
- 遅番 12:00〜21:00 2名
- 夜勤 17:00〜翌9:00 3名
介護配置
- 日中:基本は1ユニット1名
- 入浴介助・休憩で一時的に人が抜ける
- パート配置がある日はやや余裕あり
- 食事時間帯は複数職員で対応
看護配置
- 日中のみ配置
- 常勤+パート数名でシフトとオンコールを担当
- 夜間看護師は不在
夜間配置
- 2ユニットに対して夜勤1名
- 施設全体で夜勤3名体制
特徴
ユニット型のため少人数ケアではあるが、個室中心のため職員が排泄介助などで居室に入ると、一時的にフロア全体が見えにくくなる場面もある。
また、入浴介助や休憩で職員が抜ける時間帯は、実際の体感人数がかなり変わる。
例3 介護付き有料老人ホーム(標準的な価格帯の例)
定員42名
自立〜要介護5まで混在
シフト例
- 早番 7:00〜16:00 1名
- 日勤 8:30〜17:30 2名
- 遅番 10:00〜19:00 1名
- 夜勤 16:30〜翌9:30 1名
看護配置
- 日中のみ看護師を配置
- 日勤帯1名程度の施設も多い
- 夜間はナース不在、オンコール対応
実際の動き
- 入浴日は午後に1名が浴室固定
- 配薬・記録は主に日勤帯
- 食堂誘導に人手を取られる
体感配置
- 日中:約10〜12人に対して職員1人
- 夜間:約42人に対して職員1人〜2人
特徴
比較的元気な利用者もいるが、認知症や転倒リスク対応で職員が呼ばれる場面が多い。
夜勤1名体制を採用している施設もある。
例4 24時間看護型有料老人ホーム
定員65名
2フロア構成
シフト例
- 早番 7:00〜16:00 2名
- 日勤 9:00〜18:00 2名
- 遅番 11:00〜20:00 2名
- 夜勤 16:00〜翌10:00 2名
看護配置
- 日中:看護師2名程度
- 夜勤看護師:1名配置
- 24時間看護対応
業務分担
- 早番が入浴介助を担当
- 朝食:早番+夜勤
- 昼食:日勤+遅番
- 夕食:遅番・夜勤中心
体感配置
- 一時的に、日中は介護職1人あたり約25〜30名を見る時間帯もある
- 食事介助時間帯は1フロア2名配置
特徴
医療依存度が比較的高く、看護師と介護職が連携しながら現場を回している。
看護師が口腔ケアや移乗介助を手伝う場面もあれば、介護職が処置時の体位保持などを支援することもある。
個室対応のため、排泄介助などで職員が居室に入ると、一時的にフロア全体への目配りが難しくなることもある。
例5 老人保健施設
定員80名
在宅復帰強化型
シフト例
- 早番 6:30〜15:30 3名
- 日勤 8:30〜17:30 4名
- 遅番 11:00〜20:00 3名
- 夜勤 16:30〜翌9:00 4名
看護配置
- 日中は複数の看護師を配置
- 夜間も看護師を配置している施設が多い
- 医療処置や体調管理、急変対応を担当
実際の動き
- リハビリ送迎や受診対応あり
- 入退所対応で職員が抜ける日あり
- 医療処置対応で看護師が多忙
- 夕方以降は急に人数が薄く感じやすい
体感配置
- 日中:約6〜8人に対して職員1人
- 夜間:約20人に対して職員1人
特徴
日中はリハ職・看護師を含め人数が多く見えるが、入退所や処置対応が重なると介護職の余裕は少なくなる。比較的医療依存度が高い利用者もいる。
フロアに1人しかいない時間という魔のタイミング
面会に行った時、食堂フロアに職員が誰もいない。
そのからくりは、その時間、たった1人で職員がフロアを対応していて、なおかつ誰かの居室で排泄介助や口腔ケアにつききりになってしまっているから、なのですね。
そして、出勤しているはずの早番は入浴介助をやっていてフロアからは不在、日勤は休憩をとっている。日勤が休憩から戻ってきたら、次は交代で遅番の休憩です。だから、フロアに1人しかいない時間が日中数時間存在する、といったことになるのですね。
実際には、様々な職種が連携し、機能訓練指導員が食事介助を手伝ったり、ケアマネジャーも見守りを行ったりということもあるので、施設によってフロアが空になる時間の体感時間と言うのは様々です。
また、普段はフロアに3名いる手厚い施設であっても、高齢者施設と言う側面から、利用者の体調不良や救急搬送等によって一時的に手薄になることも充分あるのです。
施設選びの際に確認しておきたい「実際のフロア人数」
これからご自身や親御さんの施設選びをされる際は、人員配置にとどまらず、実際日中フロアにいる介護職員は何人位なのか、職員1人に対して何人くらいをお世話している状態なのかを最初に確認するのも良いアイデアだと思います。
個室はプライベートが保たれる反面、食堂が死角になりがちであるというデメリットも含み置き、その職員数で安心感があるかどうかもチェックしたいところです。
どんな職員が、どのくらいの人数で、どのように日々を支えているのか。
この記事が、介護施設への理解を深め、納得のいく選択の一助になれば幸いです。


