【前立腺がん】治療の副作用と、静かに蝕む筋力低下

病気の記録

父が前立腺がんステージⅣと診断されたあと、
家族の生活は静かに続いていました。

父は副作用や倦怠感と向き合いながら、仕事も続けながら
日常生活を過ごすことで精一杯だったと思います。

母も、父を支え、治療効果への不安を抱えながら
静かに日常を営むことで、心もいっぱいいっぱいな様子でした。

この記事では、診断後すぐの副作用を含めた生活と、
父に起きていた筋力低下について記事にまとめていきます。

宙ぶらりんの疑問たち

確定診断の日、そして診断直後しばらくは、
主治医は診察のたびにしっかり時間を取り、
治療についてとても丁寧に説明してくれました。

父も母も、普段は忙しそうな先生に遠慮して
聞きたいことを全部聞けないタイプの人間です。

だから受診前は、家族で相談して「これは聞きたい」と、
質問をいくつか決めて診察室に向かっていました。

とはいえ、座ってすぐ食い気味に質問できる先攻タイプではなく、
不安なことがあってメモを握りしめていても、
最初に医師の言葉を全部聞き終わってからの質問タイム。
いわゆる後攻、スタイルです。

医師に質問をしていく中で
病気のこと、治療のことはとても親切に説明してもらい、
きちんと理解できました。

でも全部の答えがしっくりきた訳ではなかったんです。
それは相手が医師だったから。

先生は、「肥満に気をつけて、普通に生活を」と言ってくださいました。
でも、具体的な日常生活のことを相談すると、正直なところ
「どうすればいいのか」はっきりした答えがありませんでした。

例えば、

「骨のためにビタミンDをサプリで摂った方がよいのか?」
  →必ずしも必要とは言えませんが、
   そう思われるなら取りいれても良いと思いますよ。

「筋力低下が心配なので、運動はした方が良いのか?」
  →取り入れた方が良いでしょうが、副作用もありますので
   体調と折り合いをつけながらで良いと思いますよ。    

などです。

医師は、医療的なエビデンスのないことを無責任に患者に勧めることはできないし、
立場上当たり前のことなのですが、
私たち家族は生活の小さな疑問を解消できずにいました。

父の通う市民病院には、がん患者の生活について相談できる部門はありませんでした。

元々血糖の高めな父が、ホルモン療法の副作用でさらに血糖が上がってしまった時は、
病院の栄養指導を受けることができました。

しかし、野菜の中でもGI値の高い物に注意とか、
フルーツはもっと控えめに、といった指導で、
がん患者のための献立について相談できる機会ではありませんでした。

医療保険の無料相談ダイヤルとか、都市のがんセンターの相談窓口とか、
もっと考えれば相談先は色々あったのかもしれません。

でも、先述のように、診断後、今目の前の生活を営むので精一杯だった精神状態で、
初めて会う人に1から自分の状況を説明し1から新しい相談先を開拓していく、、、

そんな胆力は正直とてもない状態でした。

サルコペニアとは筋肉量低下のこと

診断を受けた頃、父は筋力がかなり低下した状態でした。
病気をしていなくても、コロナ禍の運動不足と老化の時期が重なり、
筋力が落ちた方も多いと思います。

そこへ来て父はさらに前立腺がんを発症している状況です。
サイトカインという物質が全身の炎症を引き起こし、筋肉が分解されやすくなるため
がん患者は筋力が落ちやすい状態にあるのです。

そして前立腺がんの治療である ホルモン療法 も、
筋力低下や骨密度減少を引き起こすことが多いそうです。

筋肉や骨を増強維持する効果がある男性ホルモンが、
治療によって抑制されるためです。

つまり、前立腺がん治療中は、筋力低下による転倒、
骨密度低下による骨折のリスクが非常に高い状態といえます。

診断後の父の生活

父は、がんの診断確定後も、体調と相談しながら仕事を続けていました。

父でないと、と言ってくれる古い馴染みのお客様もいましたし、
仕事は父の生きがいのひとつだったからです。

早期退職への憧れが流行った時代、若くして仕事を手放した先人たちが、
どっと老け込んでしまったり、物忘れが進んだりしていた姿を父は見ていたので、
「できる仕事があるうちは役に立ちたいし、
自分の生活の張りのためにも仕事は続けたい」という強い意志があったのです。

勤務日数を減らしたり勤務時間を減らしたり、
時には休憩室で横になりながら仕事と向き合っていました。

でも、副作用の倦怠感や息切れ、火照りなどを抱えながら仕事を続けるのは
相当大変だったと思います。

家にいるときは、食事や入浴以外の時間は、リビングのソファーでも寝室でも、
気づけば横になって寝入ってしまうような生活でした。

副作用の倦怠感や息切れが生活を不活発にさせ、
生活の不活発が筋力低下を進行させ、
筋力低下が体力低下を引き起こし、
さらに疲れやすく倦怠感が強くなる。


父は精一杯生活していましたが、
このままではどんどん体力が低下してしまう。

せっかくホルモン療法に効果が出ても、
生活の質が落ちていってしまう。

父の生活を客観的に見ていて、娘の私は強い懸念を感じていました。

リハビリの必要性


病気のない人でも、筋力低下を防ぐためには、
運動やリハビリがとても大切であることは周知の事実です。

調べていくと、がん患者も運動やリハビリが重要である
という研究がたくさん出てきました。

・がん患者の運動は生存率に良い影響がある可能性を示す研究

・WHOなどでもがん患者の筋力トレーニングや有酸素運動が推奨されていること

・リハビリはどのがんステージでも意味があること



そして何より、私は怖かったのです。

その時はまだ、診断されたばかりでしたが、
前立腺がんには 去勢抵抗性 という段階があります。

簡単にいうと、現在はホルモン療法で抑えられている
がんが、耐性を持ち、再び増殖進行してしまう状態のことです。

何ヶ月、何年、何十年、ホルモン療法が有効なのか、
いつがんが去勢抵抗性になってしまうのかは、医師にも誰にも分かりません。

だからこそ私は思っていました。


PSAが下がっている今のうちに、
いつかまた本格的に戦う時が来てしまった時に備えて
体力と筋力をつけておかなければいけない。

しかし、

父は、これまでまったく運動してこなかった人間だったのです。


倦怠感や副作用と折り合いをつけるこの生活の中で
どうやって運動を生活に取り入れたら良いものか。


娘の戦いが静かに始まります。


次回は運動嫌いだった父のためのリハビリ探しを書きます。


父の場合の「前立腺がんの病気のサイン」の記事はこちら

「確定診断の日に医師から受けた説明や、父の治療方針について」の記事はこちら

この記事を書いた人

社会福祉士資格を保有。

高齢者分野の相談員として勤務しながら
制度や支援の現場に関わっています。

家族の病気体験を中心に、
当事者としての経験と、支援職としての視点の両方から
わかりやすく情報をお届けします。

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