付き添いの日の覚悟

親と子のあいだの私(体験雑記)

新学年の記憶。

当時のひとクラスは40人、1時間目は45分。
1番前の人から順番に一言ずつ自己紹介をしていってね、
と担任が指示を出す。

一人当たりの持ち時間は、割り算ができなくてもだいたいわかる。

そんな時、たっぷり時間を使って
面白おかしく自己紹介ができた人は、
間違いなくその1年クラスの人気者だ。

でも、そんなふうにみんな長々とアピールしたら、
最後のほうの人たちがどうなるか。

私は立ち上がった。
誰に目を合わせるでもなくなんとなく宙を見ながら、
早口で名前を名乗り「よろしくお願いします」と軽く頭を下げ、
すぐ椅子に腰を下ろした。

就職氷河期。
私の第一志望の企業の最終選考は、集団面接だった。

左側の人からお名前と
自己アピールをひとことで簡潔にしてください、
と面接官が言った。

プレッシャーに負けないで
しっかり自己アピールできる人を横目に、

やっぱり私は指示通り一言で
発言のチャンスを終えてしまった。



みんなの時間を、自分のペースで使える人を

図々しい人だなぁと思うし、

うらやましい人だなぁとも思う。

軸がちゃんと自分にある、自分の人生を主役で生きられる人。



就活・婚活・妊活・マタ活・保活・マネ活・ラン活…

最初は私もちゃんと主役だったはずなのにな。
いつの間にか自分の時間の軸を誰かに譲渡してしまったのかな。

時代は多様性を認めてくれているはずなのに、
それでもなお、ベルトコンベアに乗って生きているような錯覚を覚える。

自分から遠慮しといて
自分で窮屈になるなんておかしいのに、

これが染み付いた性分ってやつか。

さて、そんな私が今、

大きな病院で忙しそうな医師の前の丸椅子に座った。


私には何分許されているんだろう。

聞きたいことのいくつを、ここで聞いていいんだろう。

食い下がったら迷惑そうにされるだろうか。



譲ることのできない、父の命の話なんだ。


だけど、そんなときですら1人あたりに許された時間のことを考えてしまう。

でも。

人生でずっと貯金していた時間を使うなら、きっと今だ。

いまだけは、自分が主役で、自分が時間を使っていいはず。

だから、いまだけは。

この記事を書いた人

社会福祉士資格を保有。

高齢者分野の相談員として勤務しながら
制度や支援の現場に関わっています。

家族の病気体験を中心に、
当事者としての経験と、支援職としての視点の両方から
わかりやすく情報をお届けします。

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