「施設なのに病院へ連れて行ってくれないの?」家族が知っておきたい施設受診のしくみ

制度解説

「施設に入ったら、病院の受診も全部お願いできると思っていました。」

これは、ご家族から本当によく聞く言葉です。

ところが実際には、「○○科に受診をお願いします」と施設から連絡が入り、仕事を調整したり、介護タクシーを手配したりと、戸惑う方も少なくありません。

「どうして施設で連れて行ってくれないの?」

そう思うのは、ごく自然なことです。

今回は、施設で生活していても受診は家族対応になることが多い理由について紐解きます。

施設は「病院」ではありません

介護保険の高齢者施設は、医療職である看護師が常駐しているところもありますが、あくまで医療機関ではなく「生活の場」として位置付けられています。

発熱や体調の変化があった場合、施設の看護師は状態を確認し、契約している往診医や主治医へ相談します。

そして、医師が「専門医を受診した方がよい」と判断した場合、その内容をご家族へお伝えし、受診をお願いすることになります。

つまり、施設が受診を決めているのではなく、医師の判断を家族へつないでいる立場なのです。


多くの往診医は内科です。血液検査などで体調を総合的に診ることはできますが、例えばレントゲンなどの設備がない場合、当然患者が骨折しているのかを判断することはできません。

できる処置が施設でできる範囲を超えた場合、
処置をしても容体が不安定な場合、
専門の設備が無いと検査ができない場合、

多くの場合で上記が目安となり、主治医によって外部受診が指示されます。

その場合でも、ゼロからご家族が受診先を探さなくてはならないことは稀で、生活相談員やケアマネジャーが、本人の受診歴のある病院や近所のクリニックをあたり受診先を見つけてくれることが多いです。

主治医も診療情報提供書を用意するため、ご家族が付き添った受診先で普段飲んでいる薬を聞かれて困る、といったことも最小限にできるようなバックアップをしています。

施設職員が付き添えない理由

しかし、なぜ施設職員が付き添えないのでしょうか。

「職員さんが一人付き添ってくれればいいのに。」
そう思われる方もいるかもしれません。

ですが、病院の受診は、移動や待ち時間を含めると半日以上かかることも珍しくありません。
その間、一人の職員が施設を離れると、施設に残る他の利用者のケアに影響が出てしまいます。

付き添い費用を設定して施設職員が通院対応している施設もありますが、
月単位で介護スタッフのシフトを組んでいるので、数ヶ月前から予定していた定期受診には対応できても、急遽決まった受診には対応できない場合も現実としては多いのです。

そのため、多くの施設では契約上も運営上も、ご家族に付き添いをお願いしています。

もちろん急激な体調不良によって救急車を要請する場合は、
ご家族が病院に駆け付けるまでの間、施設職員が付き添うことが一般的です。

ご家族が悪いわけでも、施設が冷たいわけでもありませんが、
受診の連絡が続くと、

「また仕事を休まなきゃいけない。」

「どうして施設でやってくれないの。」

そんな気持ちになることもあると思います。

一方で、施設も「家族にお願いしたい」と思って電話をしているわけではありません。
医師が「必要」と判断したことを、ご家族へお伝えする役割だからです。

ご家族がご自身の生活と通院対応を両立できない場合は、どうしたら良いでしょうか?

どうしても対応が難しいときは

仕事や距離の問題で、毎回付き添うことが難しいご家族もいらっしゃいます。

そんなときは、施設のケアマネや相談員へ相談してみてください。

例えば、自費の付き添いサービス(自費ヘルパー)を利用すれば、施設からの移動、病院での長い待ち時間、受診の付き添いから会計までを、プロのヘルパーさんに代行してもらうことができます。

介護保険の対象外になるため費用はかかりますが、「仕事を調整する負担」と「費用を払って任せる安心」を天秤にかけて、こちらを選ばれるご家族も増えています。

また、定期的な受診が続いている場合は、今後の経過観察は施設の往診医に切り替えられないか、主治医に相談してみるのも良いアイデアです。


利用者が施設で体調をくずした際、どの段階(数値なのか自覚症状なのか)で外部受診をするのかを、ご本人やご家族が事前に話し合って決めておくことも大切です。
さらには少し先の視点を持って「施設で看取るのか病院での治療を望むのか」などの考え方=リビングウィルを、主治医やケアマネジャーへ相談し共有しておくのも有効な方法です。「本人が苦しくないなら外部受診はしなくてよい」と決めているご家族もいらっしゃいます。

一方で、前述の通り介護施設は医療機関ではなく生活の場であるため、提供できる医療行為の範疇を超える場合や状態が不安定な場合は、医療機関での体調の調整がどうしても必要となる場合もあります。

ご希望と現状を都度すり合わせて良い方法を選択していく必要があります。

おわりに

施設に入居したからといって、受診の付き添いまで施設が担うとは限りません。

この仕組みを知らないまま突然連絡を受けると、「どうして?」という気持ちになってしまうのは当然です。

だからこそ、ご本人の病状や生活に合わせて、受診の方法や付き添いについて事前に施設と話し合っておくことをおすすめします。
絶対に休めないお仕事の場合、あらかじめ自費ヘルパーの会社と契約をしておくのも大きな安心となります。

「困ったら相談できる」

そういう機関と関係を作っておくことが、ご家族にとっても施設にとっても、一番の安心につながるのではないかと思います。

この記事を書いた人

社会福祉士資格を保有。

高齢者分野の相談員として勤務しながら
制度や支援の現場に関わっています。

家族の病気体験を中心に、
当事者としての経験と、支援職としての視点の両方から
わかりやすく情報をお届けします。

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