【豆知識】車椅子は「椅子」ではない?腰痛を招く構造の誤解と、身体に起きていること

制度解説

車椅子は椅子なのか

車椅子は「椅子」という名前がついていますが、特に施設や病院でよく見かける「標準的な車椅子」の多くは、座り続けることよりも、折りたたんで運べること(携帯性)を優先して設計された“移動の道具”です。

そのことを知っている人は、意外と少ないように感じます。

なぜ腰が痛くなるのか

標準的な車椅子の座面は、ハンモックのようにたわんでいます。座り続けると骨盤が後ろに倒れ、腰の骨に負担がかかり続ける構造です。

さらに、走行中の振動や方向転換のたびに、身体はバランスを取ろうとします。自分で踏ん張れない方は、腰と背中の筋肉でずっと姿勢を支えることになる。

私たちが椅子に座っているとき、無意識にお尻をずらしたり足を組んだりして、圧力を逃がしています。麻痺や筋力低下がある方は、それができません。痛みから逃げ場がない状態が、何時間も続き、腰痛が引き起こされます。

「サイズが合わない」という見えないリスク

施設にある共用の車椅子など、座幅が合っていないものを使い続けると、身体が左右に傾きます。それを修正しようとして背骨が歪み、腰痛や側弯の原因になることがあります。

足置き(フットレスト)の位置も見落とされがちです。専門用語で「足底接地(そくていせっち)」と言いますが、足の裏がしっかり床やステップに着いていることが非常に重要です。ここが浮いていると、体重を支える面積が狭くなり、その分すべての重みがお尻と腰に集中してしまいます。

「高い座布団」ではない理由

リハビリ職が車椅子専用クッションにこだわるのは、単なるクッション性のためではありません。骨盤を立てて安定させるための、精密な道具です。家にある柔らかい座布団を敷くと、お尻が沈み込んでかえって姿勢が崩れます。

フィッティングの重要性

車椅子のサイズが身体に合っているか。体幹が傾いていないか。クッションは適切か。足の裏は床かフットレストにしっかり着いているか。

もちろん、座ることに特化した車椅子や生活の場に適した多機能な車椅子もありますが、

今目の前にある車椅子が、「移動」のためのものか、それとも「生活」を支えるものか。その目的を正しく見極めて、適切に使用することが大切です。

そして、体に合わせて調整された車椅子であっても、長時間同じ姿勢でいること自体が負担になることは変わりません。

その車椅子に、何時間乗り続けていますか?

→【記事リンク】施設見学でロビーや居室を見るのはもうやめて。食堂の椅子を見てください。
なぜ“椅子”を見るべきなのか。本編で詳しく解説しています。

この記事を書いた人

社会福祉士資格を保有。

高齢者分野の相談員として勤務しながら
制度や支援の現場に関わっています。

家族の病気体験を中心に、
当事者としての経験と、支援職としての視点の両方から
わかりやすく情報をお届けします。

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