70代の父が始めたこと
父は今、70代後半です。
前立腺がんステージⅣと診断されてから、生活は大きく変わりました。
でも不思議なことに、
「できなくなったこと」よりも
「できるようになったこと」の方が増えている気がします。
無理はしない。でも、止まらない
治療が始まった当初、父はまだ仕事をしていました。
とはいえ、これまでと同じようにはいきません。
体調と相談しながら
午前中だけ、週に数日だけ、と少しずつ減らしていき、
脊椎の手術をきっかけに、実務からは離れました。
今は現場には立っていませんが、
朝の掃除や建物のメンテナンスなど、「自分にできること」を続けています。
完全にやめるでもなく、無理に続けるでもなく。
父は、“やめる”のではなく、
“調整する”という生活の選び方をしていました。
70代、はじめての揚げ物
もうひとつ、大きく変わったことがあります。
家事です。
父は結婚してからずっと、いわゆる「外で働く人」でした。
でも仕事の実務から勇退した現在は、
洗濯物を取り込んで畳み、
食器を洗い、
お風呂を掃除する。
少しずつできることが増えていきました。
そして先日、母が体調を崩してしまったときのこと。
「魚のフライ、揚げたんだよ」
母が下ごしらえまで済ませていたそうですが、
70代後半にして人生初の揚げ物料理。
小さな拍手を送りたくなる出来事でした。
同じように、これまで父は自分で買い物をすることもほとんどありませんでした。
若い頃から母が不在の時はあらかじめ食事を用意してくれていて、それを食べるスタイル。
でも今は、母が用事で不在の時はコンビニに行って食べたいものを買ったり、
冷凍食品を温めて食べたり。
食べ終わったあとの片付けまで、できるようになりました。
「生活を自分で回す力」が確実に増えているということだと思います。
入院をきっかけに、世界が広がった
脊椎の手術をすることになり、入院が決まりました。
リハビリも含めて1ヶ月半くらいの入院期間。
身の回りの準備は母がしてくれているので、
娘の私は、手術後のリハビリ期間、病室で退屈しないように、
父の好きそうなクロスワードや数独、クイズ、歴史の本などを準備。
事前に病院に電話確認すると、
・ベッドでiPadやパソコンを使うのはOK
・病院にもWi-Fiはあるが、病室の場所によっては電波が弱い
との情報だったので、
iPadとワイヤレスイヤホン、ポケットWi-Fiをセットでプレゼントしました。
動画配信サービスをインストールして、病室で好きな番組を楽しめるようにするためです。
とはいえ、携帯電話の操作もおぼつかなかった、いつも「お母さん、これお願い」の父。
正直、どこまで使えるかな?と思っていました。
でも結果は、予想以上でした。
父はまるで新しいおもちゃを手に入れた子どものように、iPadを楽しみ始めたのです。
入院中は、最初は古い日本ドラマを一気見。
退院後は、映画、バラエティ、過去作へと広がり、
ついには・・・
「推し」ができました。
70代の推し活
真面目で、どちらかというと堅い父が、
70代にして、推し活。
お気に入りの女優さんの作品を追いかけて、
楽しそうに話す姿は、
これまで知らなかった父の一面でした。
「Yさんはね…」と
女優さんを苗字呼びで「さん」をつけるところも
さすが父流です。
何歳になっても、楽しみは増やせる。
そんなことを、
父の背中が教えてくれている気がします。
父母が大事にしていること
父母はよく言います。
孫の生活を一番に考えてあげてほしい、と。
会えるのは楽しみだけど、
その気持ちを押し付けたくない、と。
だからこそ今の父の楽しみは、
母と計画している旅行や、
自分で楽しめる推しの時間。
誰かに依存するのではなく、
自分の手の中にある楽しみを大切にしている。
その姿が、とても父らしいなと思います。
進化は、何歳からでもできる
病気になったからといって、
人生が止まるわけではありませんでした。
むしろ父は、
できることを見つけて、
新しいことを受け入れて、
少しずつ自分を更新し続けています。
無理はしない。
でも、止まらない。
その姿は、強くて、やさしくて、そして少しだけ面白い。
入院中に役立ったもの
父の入院中、「余暇を中心に、これはあってよかった」と思ったものをいくつかまとめておきます。
・タブレット(動画視聴用)
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・ワイヤレスイヤホン(相部屋でも快適)
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・軽い布団
当時父は足がつりやすく、火照って熱くなりやすかったので、
軽くて足さばきが良い掛け布団を持ち込みました。
ニトリのものは父にとって軽くてよかったそうです。
・動画配信サービス
父は 日本のドラマを見たかったのでU-NEXTに登録。動画を楽しむようになりました。
U-NEXTの月々のポイントで、NHKの大河ドラマや朝ドラも見られるので、父のように「昔の作品をゆっくり楽しみたい人」には合っていると思います。
余談ですが、U-NEXTは子供番組系も充実しているので、
実家に子連れで帰省したときも、三世代でフル活用できています。
父も子ども達と一緒に「ドラえもん」の映画を観て涙ぐむ場面も。
父にタブレットを渡す前の「仕込み」リスト
【そのまま渡さず、設定代行。この作業大事です。】
・初期設定を済ませておく。
新しいApple ID、メールアドレス、パスワード、
画面ロック(生年月日でよし)などを設定
・パスワードはすべて紙(アナログ)に書いて父に渡す。
・文字は大きめに変更
・Zoom(リハビリで使用)、LINE(父とテレビ電話で使う)など、最小限のアプリをインストール
実家の電話番号などを使って(※実家サイドで要協力)初期登録。
・使わないアプリは紛らわしいのでまとめておく
・ポケットWi-Fiとすぐ接続できるか確認
・ワイヤレスイヤホンとペアリングしておく
【実家で渡す前にしたこと】
・実家のWi-Fiのパスワードを入れて繋げる
・どの動画サービスがいいか話し合い、登録。
実家のテレビとiPad、両方から見られるように登録する。
・使い方や充電の仕方などの説明
・一度いじってもらって、わからない所をフォロー
父は今も、
リハビリをして、
家のことをして、
推しの作品を見て、
次の旅行を楽しみにしています。
「病気になったあと」の人生ではなく、
「続いている人生の途中」にいる。
そう思わせてくれる存在です。
おじいさんの進化は、これからも続いていきます。

