がんの診断を受けた年の暮れのこと。
三世代旅行で訪れた伊勢神宮では、
父は長い参道を歩ききることができませんでした。
「もう長い距離を一緒に歩くのは難しいのかもしれないな」
私は、そう感じました。
そんな父が2年半後、
再び坂道を登れるようになるなんて。
あの時は想像もつきませんでした。
オンラインリハビリが始まる
かくして父のリハビリが始まりましたが、
(→リハビリ探索編・運命の出会い編・リハビリ始動編は、こちら)
私はずっと付き添っていたわけではありません。
オンラインリハビリが軌道に乗ってからは、
細かいことを逐一聞いてはいませんでした。
先生と父の間だけの会話もあると思ったし、
私がオンラインリハビリを紹介した手前、
「どう?ちゃんと運動やっている?」と聞くのは
恩着せがましいような、
ちょっとリハビリを強制しすぎているような、
とにかく父にとって圧が強すぎるように感じていたのです。
父の感想
でも、次第に父の口からぽつぽつと感想を聞くようになりました。
「少し疲れにくくなってきた気がする」
「毎朝、起きる前にベッドで教えてもらったストレッチをやってるんだ」
「Y先生と話すのが楽しみでね、
この前は孫の話に花が咲いて、写真まで見せちゃったよ。先生のお子さんはもう○歳なんだって。」
まだ副作用や倦怠感で横になる時間はもちろんありますが、
徐々に疲れにくさを実感してきた父は、
家事にも参加して、家の中でも体を動かそうと心がけ始めていきます。
リハビリの経過
最初は、体を伸ばすようなストレッチ中心だったそうです。
同じ前立腺がんの方の体験談を共有しながら、
体が楽になるような生活のコツも教えてくださったり。
そして少しずつ、下肢の筋力を鍛えるメニューが増えていき、
最後の方は「けっこうきつい」と感じるくらいの負荷になっていきます。
雑談の時間も含めた60分のオンラインリハビリ。
その時間が、少しずつ父の生活の中に根付いていきました。
毎朝の習慣。
気づけば運動は、「特別なこと」ではなく
日常の一部になっていきました。
オンラインリハビリは、単なる運動指導ではなく
「生活に運動を定着させる仕組み」だったのだと思います。
だからこそ、運動嫌いの父でも続いたのかもしれません。
そんな中で、ひとつの出来事がありました。
担当してくれていた先生が、
ご家庭の事情で辞めることになったのです。
最後のレッスンの日、たまたま私と子どもたちも実家にいて、画面越しに一緒に挨拶をしました。
あとから聞いた話では、父と先生は少し涙ぐみながら別れたそうです。
その話を聞いて、
改めて先生のお人柄の良さと、
父と積み重ねてくださった時間の重さを感じました。
そして、トレーナーさんが提供するものは、
ただの「筋トレ」ではなく、
父が病気や副作用と向き合いながら生活を再構築するための伴走者でいてくれることなのだと、はっきり分かりました。
医療リハの導入もした
余談ですが、父は前立腺がんの治療の過程で、
脊椎に対する入院手術を受けています。
がんそのものの治療ではなく、
生活の質(QOL)を保つための処置でした。
そのため、父の変化はオンラインリハビリだけの効果ではありません。
治療や手術、入院中のリハビリなど、
いくつかの要素が重なった結果です。
入院中は病院でリハビリを受け、
退院後は紹介状をもとに、民間のリハビリクリニックにも通えるようになりました。
父のリハビリの選択肢は広がったのです。
ただ、多くの方が利用するクリニックでのリハビリは、
安全性や効率を重視した内容になることも多く、
その日の体の状態を整えることに重きが置かれているように感じる場面もありました。
電気治療やマッサージによって楽になることも多く、
それも大切な役割だと思います。
実際、脊椎の手術歴やがんの骨転移がある父は、コリや不調を感じても、とても街のマッサージ屋さんでもみほぐしを受けることはできません。
父の状態を理解したプロが、病気や可動域に配慮しながら行ってくださる調整には安心感があり、父も満足して通っています。
ただ一方で、
「日常生活の中で体をどう使い続けていくか」という筋力維持の視点では、
少し物足りなさを感じることもあったのです。
同じ「リハビリ」という言葉でも、そのときの状態や目的によって、
それぞれに違う役割があるのだと知りました。
父は、手術をきっかけに
仕事の現場からは勇退しましたが、
その後も仕事場の朝の清掃や建物のメンテナンスなど、
無理をしない範囲でできることに取り組んでいます。
家事も、前よりも範囲を広げて積極的に取り組んでいます。
最近のオンラインリハビリ
父のオンラインリハビリは、入退院のお休みを挟み、
担当の先生が変わったあとも続いています。
今の先生も、父にとっては話しやすい存在のようです。
最近よくやっているのが、
足の裏でタオルをつかむトレーニング。
最初は地味に見える運動ですが、
「踏ん張る力がついた気がする」
「ふらっとしたときに、前より耐えられる」
父はそう話してくれました。
そして、そんな下肢のトレーニング効果がはっきり見えたのが、その後父母が2人で行った東北旅行でした。
急な坂道を、自分の足で登りきったのです。
父にとっては成功体験となり、
「また伊勢神宮にも再挑戦したい」と新たな目標を胸に日々のリハビリを続けています。
まとめ
がんの診断から3年。
オンラインリハビリを始めてから2年半が経過しました。
リハビリ。
手術。
日々の積み重ね。
いろいろな要素が重なって、
今の状態があるのだと思います。
でも、ひとつだけ確かに言えることがあります。
あのとき何もしなかった未来とは、
全く違う今がある、ということです。
そして父の変化は、これからも続いていきます。
参考までに、オンラインリバビリを利用している
ルネサンス運動支援センターのホームページです。
大阪国際がんセンター内にある、がん患者さん専用の運動支援施設です。
専門資格を持つ指導士が、痛みや疲労など治療による不調を軽減するための運動をサポートしています。(HPより抜粋)
次の記事では、「がんの診断後すぐのタイミングで父と行った3世代旅行」について記録しています。

